さくらさくらの歌詞について

【さくら】
明治21年10月、文部省が編集した、東京音楽学校から発行された『箏曲集』に出た曲である。曲は近世の筝曲で、平野健次氏の考証によると、以前は「さいた桜」という題の、

咲いたさくら
花見て戻る
吉野はさくら
竜田はもみぢ
唐崎の松
ときわときわ
深緑

という欲張った歌詞だったのを、音楽取調掛というところで、この歌詞に改めたものという。作詞者は、『筝曲集』の編集者の一人とすれば、井沢修二・里見義・加藤厳夫のうちの誰かだったろうと思われる。

これ以後、明治・大正時代に作られた唱歌が原則として洋楽音階であったが、これは邦楽音階でできている点、異彩がある。

美しい日本の姿を伝える曲で、藤原義江氏や砂原美智子さんなどが愛唱されるのはもっともである。こういう曲がもっともっと作られれば、邦楽音階が、これ以後の子どもたちにも親しまれたはずであって、そうならなかったのが残念である。

(レファレンス共同データベース)